2026.09.25 コラム
テクニカルディレクターの仕事とは 〜「ざっくり」を現場に落とし込む〜

テクニカルディレクターの上野です。前回、テクニカルディレクター(TD)は「技術監督」という役割だとお話ししました。今回は、もう少し具体的に、TDが現場で何を「決めている」のかについてお話ししたいと思います。
■「ざっくり」を、現場でできる形にイベントの企画段階では、クライアントから「このくらいの規模感で」「こんな感じの見せ方で」といった、まだ輪郭のはっきりしないご要望をいただくことが多くあります。TDの仕事は、この「ざっくりとした要望」を、現場で実際に動ける具体的な形に落とし込んでいくことだと考えています。たとえば、機材をどこに設置するのか、どのタイミングで何を出すのか。こうしたことを一つひとつ具体的に決めて、現場に関わるスタッフに伝えていく必要があります。ここが曖昧なままだと、当日オペレーションを行うスタッフが判断に迷い、現場が立ち行かなくなってしまいます。決して大げさな話ではなく、こうした地道な「決めごと」の積み重ねが、本番の安定した進行を支えています。
■「ざっくり」を「具体的」にする、いくつかの例実際にどんなことを決めているのか、いくつか例を挙げてみます。「プロジェクターとスクリーンが欲しい」というご要望であれば、会場の図面から規模やステージの大きさを読み取り、そこから適切なスクリーンサイズを提案します。「照明で演出をしたい」というご要望であれば、会場の規模やステージの大きさ、お客様の人数から、ムービングライトや演出照明を何台使うかを決めていきます。音に関しても同様で、エンタメ的な要素があるかどうかでスピーカーやミキサーの構成を考え、現場での音量レベルを調整したり、時にはBGMの選曲まで担当することもあります。
こうした「ざっくり」から「具体的」への変換は、企画の初期段階、つまりお見積りの段階から始まっています。最初のご相談は「ざっくり」であるほど、どうしても金額の話が先に来てしまいがちです。そこで、想定される会場の図面やお客様の人数、当日のスケジュールから、エンタメの有無や演出の規模感をある程度読み取り、概算のお見積りとしてお出しするようにしています。
■技術とクライアント、両方の声を聞きながら物事を決めていく過程では、技術側として実現しやすい形と、クライアントが本当に求めている形との間に、少しずつズレが生じることがあります。ここで大切なのは、技術側の都合だけで一方的に物事を決めてしまわないことです。クライアントとしっかりコミュニケーションを取りながら、双方が納得できる着地点を探っていく。これもTDの大事な仕事のひとつです。
■自分の持ち場をしっかり作るイベントの現場には、自分が直接手配していない、さまざまなチームの方々もたくさんいらっしゃいます。施工チーム、電気工事の関係者、運営チームなど、それぞれが専門を持って現場を支えています。主催者の方が目指しているのは、あくまで「イベントを成功させること」です。ですので、自分が手配したチームだけでなく、そうした自分の手配ではないチームとも積極的にコミュニケーションを取ることを大切にしています。何か不都合が起きたときには、自分の担当範囲かどうかにこだわらず、関係者と一緒に落とし所を見つけていく。そうした姿勢も含めて、技術分野としての領域をしっかりと作り、責任を持って担っていくこと。これこそが、TDとして自分に求められている仕事であり、やりがいでもあると感じています。